山下良道(鎌倉一法庵)


山下良道師の師であり禅の修行道場である安泰寺の第六代住職の内山興正老師の哲学を紐解きながら、現代日本仏教の変遷をその変革の当事者としての視線から綴る同時代仏教エッセイ。「もうひとつの部屋」をめぐるシーズン5の第6回。


第6話    禅定に入ってからのパオ・メソッドの階梯③


■禅定の深部へ

    私がミャンマーにいたのは、2001年7月から、2005年2月まででした。都合4年弱になります。午前3時問題に格闘していたのは、2004年ごろでしょう。ミャンマー滞在中はスマホは勿論、デジカメも持っていなくて、ほとんど写真の記録がありません。2002年11月に両親が訪ねてきた時に撮影されたものと、友人の写真の中に写っているものなどが残されているだけです。今なら、撮影日時がはっきりしている写真を見ながらの過去の再構成は簡単にできますが、ミャンマー時代は難しいのです。なので、本当にあれは現実だったのか?    4年のあいだ私は夢を見ていたのではないか?    と自分でも疑ってしまう時もあります。そのくらい、今までにない場所にずんずんと入って行きました。非現実と時には感じるほど。でも、あの場所はやはり現実。何故なら、日本で生活している現在でも、瞑想の中でなら同じ場所に入って行けるから。

    今回は、禅定から午前3時問題に行き着く過程を順番にみてゆきます。それは今まで「現実」だと固く信じていたものが、「観察」の光をあてられて段々ゆらぎ始め、やがては崩壊してゆくことで、最初は底知れぬ恐怖を感じながら、その果てにまったく新しい「リアル」に出会い、その中で戸惑いながらも、慣れるにつれて深い深い安らぎを感じる。その繰り返しでした。