【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】

 皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。

 今日は子育てに関する相談です。


[Q]

 子育て中の母親です。子供が言うことを聞いてくれなくて困っています。どのように接していいかわからなくなります。何かアドバイスを頂けないでしょうか?


[A]

条件が整わないと言葉は届きません

「子供が言うことを聞かない」というのは間違っていますよ。子供は親や大人からいろんなことを言われるものです。でも、全然言うことを聞きません。その場合は、A.言っていることの意味がわからないのです。それから、B.言葉がわかっても、なぜそう言われるのか? なぜやめなければいけないのか? という理由がわからないのです。だから子供は、どうすればいいかわからなくて何かやってしまいます。親はそれを見て怒りますが、本当は「怒る理由」は無いんです。

 A.言っていることの意味、B.止めなければいけない理由、が揃えば、子供も言うことを聞きます。「階段で走って転んで、痛くなっても知りませんよ」と言えば、痛みは子供の世界でも知っている言葉ですから「階段で走ってはいけない」とわかります。そうやって、子供のわかる言葉で理由を言えばいいのです。

子供は人が親になるための先生

 子供を育てることで自分が「親」にならなくてはいけません。「新しい命」が家に入ったら自分で自分を変えなくてはいけないのですが、世の親は親になっていないのです。『自分の修行』をしていない。子供は人が親になるための先生です。子育て学校は大人の学校だから授業はありません。大学院と同じで、自分が作った課題を自分一人で研究しないといけないのです。

 子供は自分の研究課題です。子供が「〇〇しろ、××しろ」と教えてくれるわけではありません。どうすれば子供が理解するのか? どの範囲で言えば理解するのか? 何が好きで何が嫌いなのか? 興味の範囲は何なのか? と親が自ら研究するのです。

因果関係に沿って教えること

 それから、子供に教える時は「因果関係に沿って」教えてあげないといけません。「これをしたらどうなるでしょうか?」と問いかける。子供は頭が論理的にできているから、「こうしたらそうなります、ああしたらこうなります」と教えてあげればすぐ理解します。「ゴミをちゃんとゴミ箱に捨てるのは人間で、猿はそのまま放置しますよ」と教えれば、一生懸命ゴミを片付けるようになると思います。

 しかし、子育てという仕事は「こうすれば、ああなる」と一概に言えるものではありません。芸術作品と同じで、一人ひとりが作品として仕上げなくてはいけないのです。マニュアル思考では子育てはできません。それは忘れないでください。



出典 『それならブッダにきいてみよう: 教育編1』