石川勇一(臨床心理士、公認心理師、相模女子大学人間社会学部人間心理学科教授、行者)

第3回    出国、出家の手続き


17.出家の準備と手続き

    タイの僧院で修行したいと心が定まると、具体的な準備と手続きに入りました。まず、出家先の僧院で副住職をされている日本人比丘のマハープンニョー長老に連絡を取り、短期出家修行をさせてほしいと願い出ました。長老は、2019年11月に来日されており、その時に私のために時間を作ってくださり、東京の喫茶店でお会いすることができました。そこで挨拶を済ませ、出家の動機、仕事の内容や状況、これまでの修行歴、修行に関する要望などを簡潔にお伝えしました。長老は親身に耳を傾けてくださり、寺院として短期出家修行者として私を迎え入れてくださることになりました。ミャンマーでは沙弥出家でしたが、今回はその経験を踏まえて比丘出家することを認めてくださいました。話し合いの最後に、サンガへのお布施をお渡しし、受け取っていただきました。拙著『心を救うことはできるのか:心理学・スピリチュアリティ・原始仏教からの探求』(サンガ、2019年)も供物として受け取ってくださいました。
    ビザの申請には多くの書類が必要とされていて、準備は結構大変でした。書類について不明なことがあったので、タイ王国大使館に電話で問い合わせをしたのですが、いつも話し中で、ようやくつながったのは数日にわたって40回以上電話をかけてからになりました。いろいろ調べながら、ビザ申請書、パスポート、写真、英文経歴書、英文の渡航理由書、航空券、宿泊予約証明、勤務先の休職証明書(私の場合は研究専念期間証明書)、英文の預金残高証明書、申請料4,500円を用意しました。さらに、タイでの在住先の人物に関する証明書や招聘状等が必要なので、タイ人住職のアチャン・ノッパドン宛てに出家願いの文書を英語で作成して送りました。しばらくすると住職名の出家の招聘状が届きました。マハープンニョー副住職からは、身分証、保証書、そしてタイ語で書かれた大使館宛の要請書を郵送していただきました。これで申請に必要な書類はすべて揃いました。
    東京の品川にあるタイ王国大使館にビザ申請の予約を取り、書類を揃えて提出しました。窓口ではタイでなにをするのかについていろいろ質問をされたので、寺院に滞在して仏教の修行や研究を行うことを説明しました。審査の結果、無事観光ビザを取得することができました。日本人の詐欺集団が多数タイで活動しているため、日本人のビザの認可が厳しくなっているという情報を聞いていたので、ホッとしました。
    今回の短期出家も1月はじめから3月末までの3ヶ月間弱の予定でしたが、取得した観光ビザでは2ヶ月しか滞在できないので、渡航後2ヶ月以内に現地のイミグレーション(出入国管理事務所)を訪れて、1ヶ月間の延長申請をして、合計3ヶ月間修行する予定を立てました。教育ビザ(EDビザ)というものを取得すれば延長は必要なくなるのですが、こちらは申請の手続きが非常に煩雑で審査もより厳しいため、それよりは簡略で取得しやすい観光ビザで渡航することにしたのです。