松本紹圭(僧侶)

春山慶彦(株式会社ヤマップ    代表取締役CEO)


松本紹圭氏がホストを務め、さまざまな分野における若きリーダーと対談し、新しい精神性や価値観を発見していく「Post-religion対談」。今回は株式会社ヤマップ代表取締役CEO春山慶彦氏との対談です。「山を歩く」という行為から現代社会を生きるために必要な価値を見出し続けてきた春山氏は、松本氏との対話を通してその意義をさらに深めていきます。全6話連載の第4話をお届けします。


第4話    経営という修養の道場


■困難は愛が形を変えたもの

松本    修養の道場のサイクルとは、ある意味では死の練習であると私は思っています。死は人生の究極目標でもあり、一方でも目指さなくてもやってくるものです。その死に向かって、いかに死んでいくか。修養とはそれをずっと練習しているようなイメージではないかと思います。
    死というのは自分がなくなっていく舞台です。山には危険もあります。実際に滑落して亡くなる方もいます。もちろんそれは避けようとするわけですが、わざわざ危険なところに行くのって、考えてみると死の練習の要素があるなと思うんですよね。本番をしに行くわけではなく、本番に行かないように十分な注意をして、安全対策もする。そんなに安全対策をするのだったら行かなきゃいいじゃんという話もあるわけですけど、そこにある未知感のために山に行く。
    そういったことが自分自身が山に入っていくことを通じてけっこう見えてきたような気がします。