【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「親に真理を伝えたいのだがどうすれば」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
両親の介護をしています。仏典にも「親の恩は返そうとしても返せないくらい重いもの」だ、と説かれています。また、最も尊い恩返しとは「親に真理・道徳を教えること」だともありました。老い先短く、あまり仏教に関心も持ってくれない親に、どうすれば道徳・真理を伝えられるでしょうか?
[A]
■相手の「言語」を理解する
まず認識しておかなければいけないのは「それぞれの人には自分の言語がある」ということです。相手にわかる言語で話してあげないと受け取れないのです。日本語だからいいのだ、というわけではありません。私たちも相手の年齢によって言葉を変えるでしょう? 子供としゃべる場合は子供の言語でしゃべりますね。
相手の言語を知るのはいたって簡単なことです。相手がどんな言葉に反応するのかということをチェックするのです。特に家族の場合はお互いの言語を知っておかないと大変なことになります。「あいつの気持ちがわからない」という場合は、相手の言語がわからないのです。親が子供の気持ちがわからないというのは、子供の言語が変化していることに気づかないからなのです。一五歳の子供に一〇歳の子供向けの言葉で喋っても気持ち悪がられるだけです。日本語で「あの子の気持ちがわかっている」というのは、実は「あの子の言語がわかっている」という意味なのです。
■「親の説教」利用術
解決方法はこうです。親に説教する前に、あなたが親から説教してもらって下さい。「私の人生はどうでしょうね?」とか、「私はどう生きていけばいいでしょうか?」とか、「死後はどうなると思いますか?」とかいろいろ質問して親から説教してもらうのです。親が持っている世間観・人生観・死後についてどう思っているのかなどをよく聞いて、それを理解した上で、その言語に合わせて話してみてください。すぐに理解してくれると思います。そうやって理解したことについては、仏教の本を渡せばちゃんと読んで理解してくれるはずです。親があまりしゃべってくれない場合は、(子供である)自分のことを相談するような感じで訊いてください。親が子供に伝えようとする人生観は、親自身の人生観でもあります。もちろん親が実際にそのとおり実行しているかどうかは別です。後からそこの矛盾を指摘して、「お父さんお母さんが言っているのは立派な教えだから、ちゃんと実践しましょうよ」と励ますこともできますよ。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:人間関係編』