石川勇一(臨床心理士、公認心理師、相模女子大学人間社会学部人間心理学科教授、行者)


第2話    ミャンマーにて~僧院での出家修行のはじまり


■8.ミャンマーに到着

    成田を出発しておよそ8時間後、ミャンマーのヤンゴン国際空港に近づき、飛行機が高度を下げていきました。窓から無数に点在するパゴダ(仏塔)が見えてきます。ミャンマーは世界でもっとも上座部仏教の出家修行僧の多い国です。2016年時点のデータによれば、ミャンマーの出家者数は約 52 万人、僧院数が約6万5千、人口の約80~90%が上座部仏教徒です(藏本、2018)。このような伝統ある仏教大国で修行させていただけるご縁にあらためて感謝の思いが湧き上がってきました。あたかも、高校野球の選手が、憧れのメジャーリーグの球場でプレーするために渡米しているときのような気持ちでした。

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ヤンゴンで宿泊したホテルの部屋からの風景
    ミャンマーに来るのは初めてだったので、空港から僧院に直行するのではなく、ヤンゴン市内のホテルに二泊滞在しました。まずミャンマーの街を歩いて、ミャンマーの人々や文化・風土を肌で感じてみたいと思い、二泊すれば丸1日は街で過ごせると思ったからです。日本語のできるミャンマー人のガイドを頼んで、主要な寺院やパゴダを案内してもらいました。どの寺院も靴を脱いで裸足で境内に入るようになっており、掃除がよくされていました。観光客は少数で、多くのミャンマー人が思い思いに参拝していました。仏像の前で地面に頭をつけて熱心に三拝する人、お経を唱えている人、瞑想をしている人などを至る所で観ることができました。一方で、老人がのんびり散歩していたり、若い母親が赤ん坊に授乳していたり、若いカップルがお弁当を食べていたり、地元の人々がリラックスできる憩いの場として寺院が親しまれていました。仏像やパゴダの前に置いてある賽銭箱は、透明なアクリル板でできていて中身がよく見えるものが多いのですが、どこもたくさんのお札で溢れていました。多くの財施があると同時に、大金が見えても盗難されないだけの信仰心とモラルがミャンマー国民にあることが分かりました。このように、ミャンマーの街では寺院が市民の生活の一部としてよく溶け込んでおり、仏教に対する篤い信仰心があることを感じることができました。

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シュエダゴンパゴダ
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シュエダゴンパゴダの境内は多くの市民が訪れるが静謐な空気が流れている。
市民の憩いの場であるとともに、真摯な祈りの場である

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テーラワーダ仏教の礼拝は三拝を敬する

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寺院の木陰で読経する女性
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すべて釈迦如来の仏像

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ヤンゴン市内チャウッターヂーパゴダの寝釈迦仏