【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】

 皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「怒らなければ楽に生きられる?」です。


[Q]

 最近、電車の中で怒っている人を見かけることが多くて、「あの人かわいそうだな、怒らないでいればもっと楽に生きられるのに」と感じます。自分は、怒ってはいけない、自我を無くすと決めて生きる方が楽だと思っています。しかし、世間・社会ではみな「自分(自我)」を主張して生きています。そこで、自分が社会から攻撃された時、「私は自我がありません」という態度で果たして対抗できるのかどうか知りたいと思いました。いかがでしょうか?

[A]

「怒らないこと」は2つの幸福を作る


 世間や社会が怒って自分を攻撃してきた時、唯一取るべき抵抗の方法は「怒らないこと」なのです。怒らないことで、ものの見事に勝利を得られます。それだけではなく相手にも幸せを与えることになるのです。お釈迦様は「怒った人に怒り返さない人は、2つの幸せを作る」とおっしゃっています。2つの幸福とは、①自分の幸福、②相手の幸福です。怒らないことで、怒りをぶつけてきた人や怒っていた世間の怒りも消えるのです。怒る人に対して逆に怒り返さない人は、相手に幸せを与える人間です。怒らないことは大変尊い行為なのです。

 世間が団結して怒ることはまず無いですが、たまに誰かが私に対して怒ったとしても、その人に対して怒り返さずに慈しみで対応するのです。実践方法は「相手が怒ったとしても私は怒りません」と言うだけです。ただそれだけで偉大なる行ないをしていることになります。自分自身で幸福を感じるだけではなく、他人も助けてあげているのです。素晴らしい善行為です。頑張ってみてください。



出典 『それならブッダにきいてみよう: こころ編1』