アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「戒律はいつできたのですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    戒律はいつできたのですか?

[A]

    道徳と智慧・解脱は不可分なのです。最初に出家した人々は、一貫して解脱を目指していたのです。道徳基準を破るようなだらしない方々ではなかったのです。しかし仏教がインドに広がっていくに従い、たくさんの人々が出家しました。仏教に興味があって、ブッダの教えに納得して、出家の生き方に魅力を感じて、出家するケースもあったのです。そこには「出家の唯一の目的は解脱を目指すことだ」という決まりと、少々ずれがあるのです。
    その出家者たちが不注意で、ときどき道徳を間違うケースが出てきました。そのときお釈迦様は、道徳を守ってもらう目的で「戒律」という規則項目を定めなくてはいけない状況に置かれたのです。最初に戒律を定められたのは、お釈迦様が悟りを開いて二〇年ほどたったころだと言われています。
    道徳と戒律は違います。道徳と戒律の差を理解したほうがよいでしょう。
    道徳は生命なら誰でも基本的に従うべき生き方です。その生き方を項目に分けて、規則として設定するときは戒律なのです。たとえば生命なら嘘をついてはならない、というものです。それが道徳です。
    「嘘をつくなかれ、という決まりを私は守ります」という場合は戒律です。戒律の場合は仏教の戒律、ヒンドゥー教の戒律、キリスト教の戒律などなどがあります。すべてが同一のものにはなりません。しかし道徳は違います。生命はどのように生きるべきか、という普遍的な教えが道徳です。



■出典    『ブッダの質問箱』