アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「年上の人を敬うべき理由とは?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    新刊が出るたびに長老の本を読み、考え、今の能力で納得できたことに関しては実行するようにしています。
    ただ、まだモヤモヤしているのが「年上の人を敬いなさい」ということです。
    私は、歳とともに成長しようとしていない人(私よりも歳が上なのに、少なくとも私よりも心が乱れている人や落ち着きのない人)を敬うことができません。
    このように人を判断していること自体が傲慢なのは承知しています。まだ直せていませんが……。
    そのような私に対し、親や祖父母は諦めているのか、理解しようとしているのかわかりませんが、文句を言ったり、自分たちを敬うことを強制しようとしたりはしません。
    年上を敬う理由を考えてもわからないので教えていただきたいです。できれば年上だけではなく、無条件に多くの人を敬いたいと思っています。
    ただ、あまりにも敬うに値する人が少ないと思うのが現状です。今まで読んできた長老の著書にそのあたりの解説を見つける事ができなかったため、アドバイスをいただけましたら幸甚です。

 
[A]


■尊敬に値する人は少ないが、社会のしきたりも大事です

    これは大げさな問題ではありません。尊敬に値する人、敬う価値のある人はこの世に少ないのです。
    そうだからといって、私たちは社会のしきたりを無視していいのだ、我がまま奔放に生きてもいいのだ、人々の話に耳を傾ける必要は無いのだ、という事にはならないのです。社会人なら社会のしきたりに従わなくてはなりません。

■年上とは

1.自分より先に生まれている人。
(これは一般的な定義です。尊敬するかしないかは関係ありません。)

2.家族・親戚の間で先に生まれた人。
(常識的に尊敬するべきです。先に挨拶をしたり、敬語を使ったり、などです。)

3.自分を育ててくれた人、今もお世話になっている人。
(常に尊敬するべきです。たまに喧嘩することになっても尊敬の意は持ち続けるのです。)

4.年下なのに自分より能力・経験がある人々。
(職場などには年齢は下でも〝年上〟として尊敬すべき人がいます。自分と関わりのない年下の人に自分より経験・能力があっても、それは自分に関係ありません。その人のお世話にもならないので管轄外です。)

5.自分より道徳的に優れている・智慧がある。性格が素晴らしい人。
(生まれた年は関係ありません。このような人々を大事にすると、自分を戒めてくれるのです。尊敬するのは当然です。)

■尊敬とは、崇拝や服従ではなく「リスペクト」

    尊敬のしかたはその都度変わるものです。尊敬とはveneration(崇拝)でもdevotion(忠誠)でも submission(服従)でもありません。respect(リスペクト、敬意)ということです。
    人を差別・判断するのは悪行為です。自分のエゴが強くすることですから。エゴが強くなるというのは、無知になって行く事です。自分の成長を破壊することです。
    「そのような私に対し、親や祖父母は諦めているのか、理解しようとしているのかわかりませんが、文句を言ったり、自分たちを敬うことを強制しようとしたりはしません。」と書かれていました。もし親が自分の性格について何も言わなくても「自分の性格が正しい」という証拠にはなりません。親が何も言わないのにもいくつかの理由が考えられます。

1.直らないと諦めている。
2.そのうちわかるでしょう、と思っている。
3.自分のことは自分で考えるべき、と思っている。
4.我が子の生き方がそれで可愛い、世界一だと思っている。(この態度は子供の役に立たないかもしれませんね。)
5他人を軽視する我が子が怖い、関わらない方がいい、と思っている。

    年上の人をどのように尊敬するべきかということについて、私は本の中で詳しく書いていません。その必要は無いと思ったからです。それは大げさなことではなく、人間であれば誰にでもあるべき態度・常識だと思っているのです。年上の人に対する尊敬とは、お世話になっている人々に対して適切に感謝の気持ちをもって接することです。一般的に言えば、Just have a sense of respect to other peopleです。
    敬うべき人を敬う。従うべき人に従う。感謝するべき人に感謝をする。話しを聞くべき・アドバイスを受けるべき人の話を聞いて、アドバイスを受ける。ただ、それだけです。
    しかし、他人を決して軽視してはならないのです。例え、犬、猫であっても侮辱(condescending)してはいけないのです。


■出典     『それならブッダにきいてみよう:人間関係編」 

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