アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「お釈迦様が説法をしたのは、どういう人たちですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    お釈迦様が説法をしたのは、どういう人たちですか?

[A]

    意外に感じるかもしれませんが、お釈迦様は相手を選んで説法をなさいました。教えても伝わらない人に時間をかけて教えるよりは、教えればすぐに理解する人に伝えたのです。この世に真理を経験した人々をできるだけたくさん作ろうと思ったのです。
    ある日、このような言葉を説かれました。「仏道を実践して真理を発見する能力のある人が百由旬遠くいても、私はその人がそばにいるように感じます。毎日私の足元に座って、顔を仰いでいる人であっても真理を体験しようという気持ちがないならば、その人は百由旬遠くにいるのです」。(一由旬は牛車の一日の行程)
    お釈迦様は自分の四十五年間の伝道の人生を、無駄のないように気をつけたのです。できるだけたくさん解脱者を出したのです。それから教えと修行方法を明確に教えて残したのです。
    「みなのものよ、来てください。私の説法に耳を傾けてください」という態度ではなかったのです。「みなのものよ」というところを「理性のある人よ」という言葉に変えたのです。
    政治力、軍事力、財力と脅しを使って、人類に無理やり強引に宗教を広げる態度とは違います。興味のある人、理解できる能力のある人を選んで語ったのです。そのため、仏教の布教活動は人類にとって昔から今まで、なんの迷惑もかけていないのです。人の自由を守りつつ、仏道を語っているのです。



■出典    『ブッダの質問箱』