名越康文(精神科医)
現代社会を生きる上で仏教を自分の人生に活かし、行動をよりよく変えていくにはどうすれはよいでしょうか。瞑想の実践者であり精神科医である名越康文先生に、仏教の実践が人生にもたらす作用や、日々のよい行いのための具体的な実践法を尋ね、仏教的な生き方の本質に迫ります。
第2回 自然からの学びを忘れた日本人
●真に「学ぶ」ということがわからなくなっている
名越 日本のように仏教が生活に密着している国でも、なかなか正しくは理解されていないですね。なぜ、仏教が誤解されがちなのかといったら、まず「わかる」と思ってしまうからでしょうね。
編集部 ああ、自分の枠内で理解してしまう、ということですね。
名越 そうです。「お釈迦様や菩薩の教えなのだから、ひとつの言葉でも自分が思いもかけないような深い意味が内在している。それを追求していこう」という気持ちが少ないですね。「仏教というのはこういう教えである」という解説書みたいなものを鵜呑みにしてしまうからだと思います。解説書って曲者ですよね。間違ったことはひとつも書いていないし、非難めいたものもないから、みんなをわかった気にさせて終わってしまう。言葉の真の意味を追求することが仏教の始まりなのに。