【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「人の気持ちがわかるようになるにはどうすればよいのか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
他人から「無神経な奴」と非難されます。人の気持ちがわかるようになるにはどうすればいいでしょうか?
[A]
■他人ではなく自分の気持ちを理解しましょう
人の気持ちに気づかない人は、ただ自分の妄想の世界に閉じこもって外界とコンタクトを取っていないのです。それなのに、他人に何か言ってしまうので、決まって大失敗になるのです。言ってはいけないことを口にしてしまったり、とかね。無神経というのは〝妄想に閉じこもった状態〟だと理解した方がいいでしょう。
私たちは「人の気持ちがわかるようになりたい」という大それた事を考えるのをやめるべきです。それより、自分の気持ちを理解しようとすべきです。自分の痛み・自分のこころの状態・自分の喜び……それを理解すると人の痛み・人の気持ちもわかるようになります。
人の気持ちがわかるという事は、自分自身の気持ちをわかっているということなのです。
他人から「無神経だ」と言われる人は、よく見ると自分の事もさっぱりわかっていません。あまりにも主観的で、自分の妄想の中で生きています。相手に対して「こういう風に言ったら喜んでくれるだろう」「この程度だったら怒らないだろう」と考えるのは、自分勝手な主観です。なので、喜ばれるどころか怒らせてしまいます。
自分の気持ちを理解するためには、具体的に言うと、自分の気持ち・自分の神経・自分自身が物事にどう反応しているか、どのように物事がわかるのか、どのように欲張るのか、どのように楽しむのか、どのように落ち込むのかといった、あらゆる自分の感情を客観的によく理解しておくことが必要です。そして「他人が自分に対してどう振る舞った時、自分は喜ぶのか」という事を知るのです。自分の期待は何なのか、他人が私に何をしてくれれば気分が良いか、何をされたら私の気分が害されるのか、他人が私に何を言ったら怒るのかと、自分の気持ちを下地にして勉強するのです。
そうやって、自分が何者かと知る人は、相手が何者かという事もとっくに知っているのですね。なぜかと言えば、全ての生命の心はほとんど同じコピーだからです。
例えば、人が怒った時に見せる態度はどの人もほぼ同じです。顔が四角くなるとかね。これは動物でも同じですよ。犬だって怒ったら顔色が悪くなりますし、落ち込んでいる時に「おいで」と呼んでも腰が上がらないでしょう。
どんな生命でも心の動きは殆ど同じ法則に当てはまるのです。意外にワンパターンなものですよ。ですから、自分の気持ちを知っている人は他人の気持ちも知っているのです。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:人間関係編』