98才の祖父の看取り。
今まで1人で全てこなしていた祖父が、年末に誤嚥性肺炎のため、看取りケアの介護サービスを受けながらのホームへ、お引越しした。

「便所の神様、お茶ひとつどうぞ。」

幼い日、汲み取り式のお手洗いの前で、一緒に急須にいれたお茶をお捧げしたことが懐かしい。
中学の頃、修験に憧れた私を、熊野に連れて行ってくれたっけ。

酸素マスクをつけながら、胡座で私を出迎えた祖父。
明るく出迎えてくれたけど、手先は、冷たい。
酸素はかなり入っている。
「1人になるとなぁ、あれも食いたいと思うんだけど、喉を通らなくてな。」
なんて、いいながら、
「豆腐一丁。かつぶしかけて、な。」
というから、スーパーに行って、豆腐を買う。
職員さんにお渡しすると、快くお引き受け下さった。

ホームのお手洗いで、入居されているお婆ちゃまに、「綺麗ねぇ」といわれ、何度も腕をすりすりされた。
「触らせてもらったわ。」
と、お友達に語る姿に、じんわりと目頭が熱くなる。

命の輝き。

生きることは、苦。
だけど、一人一人のが、小舟に乗り、最期まで舵をとる。
だからこそ、寄り添う。

私は抱きしめて、ありがとうと言う。

安らかに。
静かに。

切に生きよ。

ありがとう。