アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「人のための嘘も罪ですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    人のためにつく嘘があると思います。たとえば子どものためを思った嘘も罪ですか?

[A]

    私たちは人を笑わせるためにも、嘘を言います。子どもをしつけるためにも、嘘を言うのです。目的はなんであろうとも嘘は嘘です。しかし相手に与える害が少ない場合は、罪の重さも少なくなるだろうと言えます。
    友人たちをからかって楽しみたいと思って嘘をついても、その嘘がばれたところで友人は怒ります。恥をかかされた気分になります。これで友情関係にひびが入りますね。あるいは漫才のように、はじめから言っていることは嘘だと相手が知っている場合は、「騙す、騙される」ことはないかもしれません。ですから嘘は罪として完了していないのです。
    しかし嘘で人を笑わせる人は、事実を捻じ曲げる妄想訓練をするはめになります。まじめに物事を考える性格が消えてしまうのです。嘘で人を笑わす人が、誰かに人生に欠かせない大事な真理を語ろうとしても、誰も真剣に聞こうという気持ちは起きないのです。
    親が軽い嘘で子どものしつけをする場合は、子どものことを心配しているのは疑いありません。しかし親がついた嘘だから、子どもには簡単にばれます。そして子どもが「親が言うことは嘘に決まっている」という気分になってしまうことは避けられません。
    親の言葉を「神の言葉のごとく、逆らえない」と子どもが思うならば、それはその子どもの一生役に立つ言葉になるのです。親という存在は夢の中でも子どもの不幸を思わないのです。ですから子どもに信頼されるならば、親としても役目を完璧に果たすことができるのです。




■出典    『ブッダの質問箱』