アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

 皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「夢は持つべきでしょうか?」というお悩みにスマナサーラ長老が答えます。


[Q]

 ビジネス書などを読むと「人生に夢を持つべき」といったフレーズが踊っています。親しい人々と話をしていても、「将来の夢を大切に」などと言われることが多いです。一方でスマナサーラ長老の書かれた仏教の本を読むと「夢は持たない方がいい」という言葉が飛び込んできます。いったい夢は持った方がいいのか・持たない方がいいのか混乱しています。



[A]

■世間の言葉はいいかげんです

 世間の人々が言っていることには、しっかりした根拠があるわけではありません。とりあえず何か言っているだけです。一方、お釈迦様はしっかり真理を把握して語っています。そこで、「私たちは誰の話を聞くべきか?」という問題が現れるのです。
 答えは明確です。私たちは「知っている人」の話を聞くべきなのです。素人判断でアドバイスしてくれる人の心配する気持ちは分かりますが、それで上手く行くのでしょうか? 親は子供のことを心配してあれこれ言いますが、その言葉は常に的確でしょうか? 社会人として自分で判断しないといけないのです。
 「夢が大事、夢を持て」と誰もが謳っていますが、そもそも「夢」とは何でしょうか? 定義できない曖昧中途半端な言葉です。はっきり意味を知らないから言葉の選択もおかしいのです。本当にすべきアドバイスは「夢を持て」ではなく、「ターゲットを持ってそこに向けて頑張れ」ということなのです。夢を持てと言われてもどうすればいいか分かりませんが、ターゲットならすべきことが分かるのです。

■しっかりターゲットを定めましょう

 人間はターゲットがないと動けないものです。ですから、曖昧な「夢」ではなく、しっかりとターゲットを定めて、それにむけて努力すれば成功を収められます。
 ここまでは俗世間の話です。
 仏教的にもう一歩踏み込んでアドバイスするならば、今日一日、充実感を得て生きられるように励めば、人生には何も問題は起こりません。夢よりもターゲットの方がましですが、もっと仏教的に言うならば、今の瞬間・瞬間を、一分一秒を、ビシビシと生きることです。今の瞬間、何をすべきかは明確にわかります。この一秒に何をすればいいのか、ということには疑問が生じる余地はないのです。ですから、瞬間・瞬間、充実感を持って生きようではないか、というのがブッダ推薦の明るい人生論なのです。


■出典  『それならブッダにきいてみよう:こころ編2』

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