アルボムッレ・スマナサーラ(初期仏教長老)
スペシャルゲスト:島田啓介(翻訳・執筆家)

戦争や災害が繰り返し起こり、辛い現実や悲しいニュースが日々飛び込んできます。どうすれば私たちは困難な時代をくじけることなく生き、世界としっかり関わっていけるのでしょうか?    世界をより良く変えていく瞑想実践について、スマナサーラ長老にご教示いただくオンラインイベントを全5回でお届けします。第3回はスマナサーラ長老とスペシャルゲストの島田啓介氏の対談をご紹介しています。


第3回    スマナサーラ長老と島田啓介氏の対話②慈しみの心は周囲を照らす


■自分の心が安らいでいることこそが平和

島田    先日(2024年3月)、広島にプラムヴィレッジ【★注3】の僧・尼僧の方々5人を招いて、法話をしていただいたり、地元の若者と対話をしていただいたり、チャンティングをしたりするイベントを行いました。広島は被爆した場所ですし、平和の象徴的な都市ですから、平和を目指して活動する場所として、私がむかしから通っていた地です。ただ、平和ということも執着になってくるんですね。
    たとえば平和活動をしても、現実には今のウクライナやガザのようにどんどん戦争は起こる。平和のためのいろいろな努力やアピールをしても私たちは安全なところにいるから、「ああ、自分はこんなおいしいものを食べていて、向こうは全然戦争が終わらない」といった無力感も出てきます。同時に、自分たちはそれでもこれだけ努力しているというような自負心も出てきたりして、それが非常な執着になってくるんですね。
    今回の広島を含む数か所で行われた来日ツアー全体のタイトルは“Being Peace”ということで、友人が「平和を生きる」と訳しました。「自分自身が平和を生きるってどういうことだろう」ということをテーマに、ツアーの中で、果たして今自分がこういう話をして、こういう行動をして、こういうことを思うのは、平和を生きていると言えるだろうかという問いかけを常にしたのです。