アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「努力のしかた」です。

[Q]

    僕はコツコツと地道な努力をすることが苦手で、すぐにやめたくなったり、逃げたくなったりするのですが、どうすればそれが直りますか?

[A]

■第一に目的を定める


    まず、そういうことになるのは目的がハッキリしていない場合です。自分が「これをやりたい!」という意志・気持ちが明確であれば、コツコツと地道に努力します。「これはやりたくないな」と意志・気持ちがぶれる、揺れると、やめたくなったり逃げたくなったりするのです。
    ですから、第一に目的を定め「これをする」とハッキリ決める。そうするとコツコツ地道に努力できるようになります。負けないという気持ちを作る。ただし何を目的とするかは大事です。価値の無いこと(悪行為)に努力しても意味がありません。価値があること(善行為)なら「挫けない」「やり遂げる」と決意すれば、例え難しく困難なことでも努力することができると思います。

■第二に物事の順番を知る

    それから第二に、「コツコツ地道に努力する」というふうに思わないことです。物事(現象)というのは、建物を造ることと同じで順番で成り立つものです。建築は別に地道に努力をしているわけではなく、まず土台となる基礎を造ります。型枠にコンクリートを打って、骨組みとなる柱を建てて、屋根を張って、壁を作ってと、順番があるのです。「地道」ではなく、「順番」だと覚えておいてください。言葉を入れ替えてください。

■現象は順番で結果を生む

    何事にも順番があります。その順番・過程をひとつずつ踏まないと結果は現れません。何も起こらないのです。何もできないのです。目的に達しない、という意味です。これは自然法則です。例えば何かの種を持っていても、それだけではいきなり果実を食べられないでしょう。カボチャの種だったら、まず土に植えて、水をあげて、肥料もあげて、日の光に当てる。そのように順番で頑張らなくてはいけません。結構たくさん順番があるのですが、それをひとつずつ行えば、カボチャという実が成るのです。種を植えた人もカボチャの種も地道に努力したわけではありません。ただ順番を踏んだだけです。

■言葉を入れ替えて、物事を把握する

    そういうことで、「地道に努力する」という言葉・フレーズを捨ててください。どんなことでも「順番でする」「順番がある」というふうに覚え直してください。第一に目的・意志を明確にする・決める。第二に順番で進む。ですから、「私は地道にやりません」と言っても良いのです。順番で進めば上手くいきます。「地道」という言葉に、皆、暗い意味を付けているようです。結局、物事は順番なのです。英語の「hard working(勤勉)」は地道という意味になります。しかし、物事は順番に進めれば、苦労することなく、楽しく結果が出るまで努力することができます。

■理解においても順番がある

    大人が難しい本を読むでしょう。ひとつの本を読むにしても、三千冊ぐらいの参考文献があります。私が今読んでいる本では、ギリシャ語やアルマイ語やドイツ語など様々な言語で書かれた本を参考文献として使っています。本一冊の本文よりも参考文献リストの方がよほど分厚いのです。そこで著者があるポイントを説明するために、順番に参考文献を参照・引用する。そのように順番になっているから皆が理解できるのです。ですから、地道ではなく順番でやってください。そうすると問題なく上手くいくと思います。



■出典     それならブッダにきいてみよう: 教育編2 | アルボムッレ・スマナサーラ | 仏教 | Kindleストア | Amazon

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