【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「物忘れ」についてです。
[Q]
大事なことも、簡単なことも、わりとすぐに忘れてしまうことに悩んでいます。どうすればいいでしょうか?
[A]
■過去や将来にさまようと、大事なことを忘れます
別にそれほど悩まなくてもいいと思います。大事なことを忘れて困っている、という場合、忘れたのは今行なうべき大事なことです。つまり今、あなたは過去に生きているのです。今、現在には生きていないのです。心が過去の妄想のループに入ってしまえば、誰だって大事なことも、それほど大事ではないこともうっかり忘れてしまいます。物忘れとは、過去の幻覚に閉じ込められている人々の問題であると理解してはいかがでしょうか? もしかしたら脳の問題かもしれません。病気の場合は治療しなくてはいけませんね。物忘れの症状がある時も、面白いことにその方々は現在のことは忘れますが、過去の何かに引っかかっているのです。
例え若い人であっても、時間の殆どを過去か将来に生きることにしてしまったら、今行なうべき大事なことを忘れてしまうのです。それで損をしたり、社会から非難を受けたり、仕事が無くなったり、友達を失ったり……という散々な結果になります。もし人が、今を見て生きることに挑戦するならば何も忘れません。忘れるという言葉も成り立ちません。本人は今、やるべきことをやっているのですから。何か忘れたと気づいた瞬間、過去か将来の何かに心がさまよったことになるので調べてみてください。「現実は今の瞬間のみである」という真理を知っている人にとっては、「忘れる」という単語は成り立たなくなります。「妄想」と「忘れる」はペアです。現実を妄想することはできません。ですから、現実のみを生きる人に「忘れる」という現象は存在しません。
■今を生きていない人は死人と同じです
人は妄想することが癖になっています。つまり今を生きていません。「今を生きていない人々は、死人と同じである」とお釈迦様は説かれました。過去・将来の妄想にさまよっている私たちも死人同然なのです。認めたくはない嫌な言葉だと感じるかもしれません。死人は、今何が起きているのか全くわかりません。過去・将来の妄想にさまよっている人も、今何が起きているのか気づいていない、わからなくなっているのです。ですから死人同然なのですね。過去のこと・将来のことが、つい頭に浮かんで妄想の中にさまよったら、ただちに「今、私は死人同然だ」と思い直せば、現在に戻ることができるのです。
今に目覚めているということが生きているということになります。今に目覚めている人は、すごく元気なのです。常に「今はどうか? 今はどうか?」と自分に訊いてみてください。そうすると大事なことは忘れません。頑張ってみてください。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:ライフハック編』