(早稲田大学人間科学学術院教授)


熊野宏昭


生命コンシャスの道


 現在、世界は、数千年続いてきた文明の大きな曲がり角に差しかかっているように思われる。このまま人類社会が生き延びられるのかどうかを考えるとき、現代社会においてこれまで支配的だった科学、政治、経済などの仕組みがこれからも機能するのかどうか自体が問われているのではないだろうか。そのような中で、2600年にわたり、世界の様々な文明を裏打ちする形で、目覚めを求める人々に力を与え続けてきた仏教の教えや、それを実践する人々の緩やかな共同体である「サンガ」の存在が、これまでになく求められていると思われる。

 私が、出版社サンガの本に最初に出合ったのはいつだったのだろう。そう、2005年に『自分を変える気づきの瞑想法』を手に取ったのが、初めてだった。3週間毎日取り組めば自分が変わると書いてあったことを確かめてみたくて、毎日朝晩一生懸命取り組んだのである。それから16年間、1日も欠かさずに続けてきて、色々な気づきがあった。その間、『なぜ、悩む!』に助けられ、同年の11月には、『ブッダの実践心理学』第一巻が刊行になり、早速購入した。また、2006年に出版されたサンガ新書『怒らないこと』は、まさに衝撃的であった。どの本も、それまでに読んだことのない、初期仏教の教えそのものが、とても平易な言葉でつづられており(『ブッダの実践心理学』は例外か)、本の装丁や挿絵の使い方なども、どことなくミーハーで、手に取りやすかった。