【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「苦の真理が扱う範囲は?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
苦の真理が扱うのは、どの範囲についてですか?
1.人間界 2.すべての生命 3.物質を含むこの世のすべて
[A]
この三つとも「苦」に入ります、と言えば正解です。しかしそう言うと、哲学思考になってしまい、現実的な問題ではなくなります。ですからまず、われわれは人間なので、人間の範囲で苦しみを理解しましょう。それから苦は人間だけに限ったものではなく、一切の生命の生きる衝動であると理解します。生きるとは、感覚があるという意味です。感覚があるから、苦を感じるのです。
物質の場合は感覚がないから、苦は感じません。椅子が「苦しい」と泣くことはないでしょう? しかしすべての現象の本性・本質は「無常」「苦」「無我」なのです。物質は「無常」だから「苦」でもあります。「無我」でもあります。物質の苦は生命の苦と区別したほうがよいでしょう。苦には、1.不完全、2.空しい、という意味もあります。物質にこの二つの意味が当てはまります。最終的に言えるのは、「苦ならざるものはこの現象の世界でなにひとつない」ということです。
■出典 『ブッダの質問箱』