〔ナビゲーター〕

前野隆司(慶應義塾大学)
安藤礼二(多摩美術大学)

〔ゲスト〕
大場唯央(静岡県大慶寺)
佐々木教道(千葉県妙海寺)


應義塾大学の前野隆司先生(幸福学研究家)と多摩美術大学の安藤礼二先生(文芸評論家)が案内人となり、各宗派の若手のお坊さんをお呼びして、それぞれの宗派の歴史やそれぞれのお坊さんの考え方をざっくばらんかつカジュアルにお聞きする企画、「お坊さん、教えて!」の連載第3回は、日蓮宗の大場唯央(静岡県大慶寺)さんと佐々木教道(千葉県妙海寺)さんをお迎えしてお送りします。


(7)お寺は過去と現在と未来をつなぐ


■お寺には過去、現在、未来をつなぐ使命がある

──生きている人の数は、今まで死んでいった人の数と比べるとかなり少なく、いわばマイノリティであると思うのですが、私たちが生きている意味とは一体何なのでしょうか。

佐々木    お寺には数多くの方々が眠られています。その方々があって今がある。僕らの知らない数多くの方々が作ってくださった今であり、この地域であり、お寺であるということを感謝して受け取って、また次の世代につなげていくことが大切だと思います。
    僕らが生きている今というのはほんの一瞬で短い時間かもしれませんが、だからこそ尊くて、だからこそ過去があり現在があり未来がある。そのつながりをきちんと考えた上で、今僕らは今を大切に生きなければいけないと思います。

大場    久遠の命を意識すると、また感じ方は変わるのかなと思いますね。法華経の中でお釈迦様は久遠の仏だと言われています。お釈迦様の肉体は滅しても、常にここで法を説いているのだと。お釈迦様を久遠たらしめているのが、それを語り継ぐ人やサンガなんですよね。
    僕は、お亡くなりになった方の命を久遠の命にしていくのがお寺の使命なんだろうと思います。お寺には、亡くなった方の記録と記憶が蓄積されているんですよね。過去帳というものがあって、亡くなられた方のお名前や戒名がすべて書かれて残っています。僕のいる大慶寺であれば江戸時代に火事があったので、それ以降になりますけど。お寺には亡くなった方を、亡くなったことにしない使命があるのではないかと最近思ったりします。

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長い歴史を持つ大慶寺
(写真提供=大場唯央)
佐々木    僕も通夜や葬儀のときに、この今この場所が相続をする場所なのだという話をします。形あるもの、目に見えるものを受け継ぐことが相続のイメージですけど、形にならないもの、目に見えないものも受け継がなければいけないと思います。そういうものは大事に受け継がないと残せないんですよね。
過去のものをいろんな形でアーカイブしたり、次の世代に伝わるまで守っていくということが、お寺の一つの役目だと思いますね。

■一緒に地域を変えていきましょう

前野    今日も楽しかったですね。佐々木さんと大場さんがとても魅力的で、この魅力も日蓮宗だからなのだろうなと感じました。僕がほろっとしたのは、佐々木さんの「これまでは自分勝手だった」と思って僧侶になろうと思ったお話と、大場さんの地域のために目覚めたときの力強いお話です。日蓮さんが強さと優しさを秘めた人だったということが統一的に感じられました。
    お二人とも本当に魅力的ですよね。面白そうに笑っているかと思ったら、言うべきときなるとすごい気合いが入って、自分流をイキイキと実践されていて格好いいなと思いました。50年後にお二人がどんな感じになっているのかが楽しみです。またお会いしたいです。

安藤    私もとても勉強になりました。実践が大事である、これが日蓮上人の教えだとわかりました。先ほど、お寺は過去と現在と未来をつないでいく場所だとご説明いただきましたけど、前野先生や私のいる大学も、本来であればそうした機能を果たす機関だったと思います。
    でも現在の大学は地域からも切り離されてしまっていますし、なかなか大学だけでは果たし得ないところがあるんですよね。ですから、私が外側からあれこれ言うのも問題があるかとは思いますが、お寺という場所が、本来は大学がなさなければならない機能を、現在では唯一果たそうとしている場所である。そう言うこともできますし、それ以外にも、まださまざまな可能性を秘めているのではないかと感じました。

佐々木    今日は長時間にわたりありがとうございました。自分としてもなぜ日蓮宗なのかを確認できた時間でした。お寺はこれから地域の中で大事な役割を担っていけると僕は思いますし、その可能性は無限にあると思っています。昔はお坊さんになりたくなかったのに、今は天職だと思って楽しく活動しています。こんなに皆さんとつながって楽しいことはないなと思っています。そこに皆さんがいるからこそ、僕たちは頑張れます。もし、外から見ているだけではなく、皆さんが地域を変えていきたいと思ったときに、お寺と手を組んでみようというようなことを考えてくださる方が一人でも増えたら嬉しく思います。
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地域の方と共に
(写真提供=佐々木教道)
大場    今日の僕の発言は、日蓮宗オフィシャルの発言ではなくて、僕の如是我聞であるということをご理解いただければと、最後に保険として言っておきます(笑)。
    教道さんと同じく、僕も熱意を持ってやっていますけれども、一人では実現し得ないことのほうが多いので、仲間が必要です。お寺という場にはさまざまな可能性があると思います。でも可能性って、あるだけだと可能性で終わっちゃうので、できることをやって可能性を実現していきたいと思っています。
    皆さんの地域にもいいお寺がたくさんあると思いますので、そういう人たちと手を組んで、ぜひいろいろな活動を一緒にしていいただけたらと思います。今日はありがとうございました。

前野    ありがとうございました。今回もいい回でしたね。次回は浄土宗の井上広法さん(栃木県光琳寺)と、大河内大博さん(應典院)をお迎えしてお送りします。まだまだ続きますのでお楽しみに。

(了)


2021年慶應SDMヒューマンラボ主催オンライン公開講座シリーズ「お坊さん、教えて!」より
2021年6月21日    オンラインで開催
構成:中田亜希



(6)平等思想が法華経の要