名越康文(精神科医)


現代社会を生きる上で仏教を自分の人生に活かし、行動をよりよく変えていくにはどうすれはよいでしょうか。瞑想の実践者であり精神科医である名越康文先生に、仏教の実践が人生にもたらす作用や、日々のよい行いのための具体的な実践法を尋ね、仏教的な生き方の本質に迫ります。


第4回    感情から降りて心安らかに生きる


●自分の感情から降りてみる

名越    お釈迦様は「私だけじゃないよ。みんなこうなれるよ」とおっしゃいましたけど、それは「本来の心の状態というものはそうじゃないんだ」ということを言っておられると僕は思うんです。自分が落ち込んだり凹んでいたりする状態は、本来の自分ではないという意味でね。僕は、気分のアップダウンがあったら「本来の自分に戻ろう」と思って、では、どうやって戻ったらいいかなと、その時々で考えます。呼吸法をしてみたり、体を動かしてみたり、瞑想してみたり、本を読んでみたり、音楽を聞いてみたり。それは、僕にとって気分転換ではなくて、本来の自分に戻るための作業です。そして、それは全部、仏教の思想です。