愛憎相交々すると言われるように、相手のことを思う愛情の中に所有欲が混ざっているうちは、相手が自分の思うようになってくれないと愛情は一瞬のうちに憎悪に反転してしまいます。慈の近い敵が愛情や愛欲、遠い敵が敵意や増悪や恨みなどです。両極端を離れたちょうど良い距離感に立てたとき、自然に相手のことを思いやる心が芽生えることがあります。


井上ウィマラ(健康科学大学健康科学部教授、仏教心理学会会長)
(サンガジャパンVol.34 誌上シンポジウム「心理臨床と仏教」第3回)
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