石川勇一(臨床心理士、公認心理師、相模女子大学人間社会学部人間心理学科教授、行者)


第4話    瞑想修行の実際~的確な指導と瞑想の進捗


■23.私の瞑想修行

    さて、このような恵まれた修行環境で、私の瞑想の実際はどうだったのでしょうか。既に申し上げたとおり、予想外に早く僧院の生活に適応することができた私は、身心ともに整った状態で修行に臨むことができました。瞑想を指導してくださるクムダ・セヤドーの暖かい雰囲気と、明解で落ち着いた指導は信頼出来ると感じられたので、余計なことを考えることなく、ひたすら与えられた課題を実践することに集中することができました。毎日8時間近く瞑想をし、ほとんど会話もしない生活なので、驚くほど心が静かで安定していきました。これが在家の生活と大きく異なるところです。仕事やコミュニケーションや諸々の情報や刺激によって心がかき回されることがないと、心に溶け込んだ雑多な塵芥がしだいに沈殿してゆき、透き通った心になっていくのです。内も外も1日を通して刺激が少なく、静かであることが多いので、脚を組んで目を閉じると速やかに集中出来ることが多くなりました。
    もうひとつ、出家のアドバンテージとして見逃せないのは、周りで座っている修行者の中には、見事に禅定に入っている人が結構いるということです。私はHSPの気質のため、よくも悪くも周囲の影響を受けやすいのですが、ここではよい影響を受けやすかったように思います。深い瞑想に入っている修行者に囲まれていることは、非常に瞑想の助けになるのです。これはサマタを徹底し、大人数の出家者が一堂で瞑想するこの僧院ならではの大きな利点であったと思います。
    このように、毎回の瞑想をはじめるスタート段階で、すでに心が清らかで静かになっていることが多いことに加えて、周囲の深い瞑想に共鳴するようにして、自らも集中していくことができたのです。もちろん瞑想の状態は体調の変化もあり、多少の凸凹はありますが、総じて日を追うごとに深まってゆき、結果として、与えられた課題にほとんどつまづくことなく順調にクリアしていくことができたのです。