松本紹圭(僧侶)
熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野准教授)


「未来の住職塾」塾長でもあり、現在「産業僧」事業に取り組む松本紹圭氏がホストを務め、さまざまな分野における若きリーダーと対談し、伝統宗教を補完するような新しい精神性や価値観を発見してく「Post-religion対談」。今回は松本紹圭氏のたっての希望で実現した、東京大学准教授の熊谷晋一郎先生との初対談をお届けします。


第4話    生きるために先人とつながる


■個人は本来「目的そのもの」

松本    海外に向けて日本仏教の特徴を発信するとき、私はよく「アンビエントブディズム」という表現を用います。ブライアン・イーノという音楽家がアンビエントミュージック(環境音楽)というジャンルを確立しました。アンビエントミュージックというのは、それと意識しないのだけれども聞こえてくるような音を音楽として提示するものです。
    今も耳を澄ませば空調とか、外を走る車の音とか、実は何かしらの音が鳴っているのが聞こえると思いますけど、日本仏教は何かそれに近いところがあるのではないかと思っています。環境というよりも「風土」に近いかもしれません。風土的な仏教。それを自分自身でも探求しつつ、近代の極地である企業で働く方々に伝えて、皆が近代の軸とは全然違った軸を感じて、双方を行き来できると非常にいいのではないかと思っているところです。

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松本紹圭師