仏教によって描かれる新しい社会のかたちは、思想家・武道家である内田樹氏がかねてから提唱している「コモン」の感覚抜きには語れないものだろう。今の時代に仏教に何ができるのか、その可能性を、サンガ新社代表の佐藤由樹が、内田樹氏が館長を務める凱風館を訪れうかがった。
第5回 世界に向けて発信する意義
■世界十指に入る日本語話者
佐藤 前回、オンライン時代の今、隣町に発信するも海外へ発信するも同じ手間なのだから、サンガ新社も世界に向けて発信したほうがいいと勧めていただきました。確かに、クラウドファンディング中も支援してくださる読者の方とのミーティングなどを行いましたが、「海外でサンガ新社の電子書籍を買えるようにしてほしい」とか、「緩やかなコミュニティに入ってわいわい話したり、サンガの出す仏教の本について語りたい」などと言ってくださる海外在住の方がある程度いらっしゃいました。
内田 そうだと思いますよ。日本語話者ってけっこう多くて、世界的でもトップ10に入るんですよ。一番多いのは中国語で、あとは英語、アラビア語。日本語はベスト10に入る、わりと話者数の多い言語なんです。
国際共通語というと、どうしても英語ということになりますけれど、英語のネイティブ・スピーカーは3.8億人。もちろん十分多いですけど、「コミュニケーションは英語ベースで」ということになると、地球上の残りの70億人以上は「英語を勉強してこい」ということになる。
母語であれば、かなりレベルの高いことを持続的に発信できる人でも、「それを国際共通語で」と条件をつけられたら、発信力が一気に落ちるというのは、とてももったいないことだと思うんです。だから、電子書籍でおやりになるんだったら、日本語ベースでいいと思うんです。それで世界の日本語話者に向けて発信すればいいと思います。かなり面白いことができるんじゃないですか。