【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「ラーフラがお釈迦様の財産を欲しがったことの真相は?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
「ラーフラがお釈迦様の財産を欲しがった」ことの真相を教えてください。
[A]
それは、ヤソーダラ夫人がからかってラーフラに言ったことがきっかけです。お釈迦様がブッダになってカピラヴァストゥに戻ったとき、ブッダは実家があるにもかかわらず托鉢を続けようとしてスッドーダナ王は驚愕します。「なぜ比丘たちと一緒に家に来ないのですか? 自分の家柄に乞食はいませんよ」とたずねました。しかし、ブッダは「私はブッダです。ブッダの家柄では托鉢をするのです。人には頼りません。それは気にすることではありません」と答えたのです。それで父親は、ブッダがいる間、ブッダと比丘たちを家に招待して食事をお布施することにしました。
しかし、食事の場にヤソーダラ夫人は顔を出しません。スッドーダナ王はブッダに、「あの子(ヤソーダラ夫人)はすごくいい子です。あなたが出家してとても悲しみましたが、耐えました。あなたが一食になったと聞いて、彼女も一食しか食べません。あなたがすべてのおしゃれをやめたと聞いて、彼女もやめました。とにかくあなたがやっていることが噂で流れてくると、自分もそれをやろうと頑張ります。あの子の頭の中には、あなたのこと以外ありません。ですから、この場に現れない気持ちをわかってあげて許してください」と語って嫁を擁護したのです。
お釈迦様は夫人の気持ちがわかりました。自ら夫人のところへ行きました。ヤソーダラ夫人はいきなりお釈迦様の両足にぎゅっとつかまって泣き崩れたのです。出家ですから、女性は身体を触ってはいけないとわかっているのにです。お釈迦様は、夫人が思う存分、泣いて泣いて、気が晴れるまで静かに待ちました。本当にいい夫婦だったと思います。じっと待っていて、落ち着いたら挨拶をして退室しました。
次の日も次の日も、スッドーダナ王は、お釈迦様たちにお布施を用意して招待しました。やがてヤソーダラ夫人の気持ちが穏やかになったある日、夫人は母としてブッダに息子を紹介しました。そのとき、ヤソーダラ夫人は息子をからかってこう言いました。「お前の父親は七つの財宝を持っています。それは生まれたときに地球から現れました。七種類の、ものすごい財産・宝物です。しかし出家した時点で、その財産がどうなってしまったのか、わからなくなっています。父親の財産は息子のものですから、お前、お父さんに財産があるところを聞いてはどうですか?」。ラーフラは、「じゃあ、聞いてみます」とさっそく父のところへ向かいました。お釈迦様が食事を終えて立ち上がるところへ来て、手を取って「お父さん、あの七つの宝物はどこにあるの? 私にちょうだい」と言いました。すると、お釈迦様は息子の手を取って、そのまま比丘たちと泊まっているお寺に連れていったのです。
お寺に着くと、お釈迦様はサーリプッタ尊者に「この子は私の財産を欲しがっています。私の聖なる七つの財産をこの子にあげてください」と言ったのです。
この「七つの財産」というのがポイントです。生まれたときの財産も七つですが、ブッダの「聖なる財産」も七つなのです。そう経典にあります。サーリプッタ尊者は智慧の第一人者ですから、言っていることがすぐにわかり、ラーフラを出家させたのです。
■出典 『ブッダの質問箱』