【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「親への怨みを断ち切りたい」という相談にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
子供の頃から母親の過干渉や愚痴のはけ口になっていたことが影響して、生きることが非常に辛く感じています。母親も完璧な人間では無いことは理解できる歳ですが、母への憎しみが出てきてしまい、自分を生産した親と自分の生そのものを否定したくなります。介護中にそんな思いが生じて辛くあたってしまうことが一番辛いです。
[A]
■「慈しみ」を実践しましょう
たとえ悪人であっても、親を怨む権利はありません。生を頂いたので、返しきれない借りがあります。自分自身が素晴らしい人間になることでその恩は返せます。
親の介護は自分にとって善行為になります。しかし、それで親が「救われた」ということにはなりません。介護があってもなくても、生きる苦しみには変わりはないのです。安らぎは精神的なものです。だから「慈しみ」なのです。
怨みながら介護すると悪行為になります。せっかく苦労しているのに、得るものは何もありません。
あれこれ言わず、天地顛倒する妄想を止めて、いい加減「慈しみ」を実践してください。
これは親が悪いのではなく、子が未だに自立していない、いわゆる親離れをしてないという不自然な現象です。自立した大人になって初めて、人は親のありがたさ・親の恩に気付くものなのです。
親を怨むと自分自身の徳が消えます。過去で行った善行にも結果を出すチャンスがなくなります。人生がダメになります。
人間として生まれるのは希なことなので、それを無駄にしないことです。親だけではなく、一切の生命を慈しむことです。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:人間関係編」