【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「正覚者とは、どういう意味ですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
「正覚者」とは、どういう意味ですか?
[A]
悟りに達した方々はみな覚者です。悟りを最初に発見したお釈迦様が正覚者なのです。それだけの差です。中身の差ではありません。エベレストに登る人々はけっこういますが、最初に頂上に登ったのはネパール人シェルパのテンジンと英国のE・P・ヒラリーです。これだけは誰にも変えることはできません。地球上のどんな偉い人がエベレストを登ってもテンジンとヒラリーの記録を変えることはできません。
このように、お釈迦様の立場はけっして変わらないのです。お釈迦様が「正覚者」です。悟りに達するほかの方々は「覚者」なのです。「正覚者」(sammāsambuddha)という言葉をお釈迦様自身、使っていました。これは弟子たちと自分を区別するための用語ではなかったのです。
それまでにもたくさんの修行者たちがさまざまな修行方法を営んで、最終解脱に挑戦しました。しかし誰も成功しなかったのです。だからといってそうした人たちの修行は完全無益という意味でもないのです。精神的に高い境地に達した仙人たちもいたのです。お釈迦様もそうした仙人二人から瞑想方法を学んだことがあります。そしてその方法で究極の禅定(サマーディ)状態にまで達することもできたのです。しかしそれは「解
脱・涅槃」ではなかったのです。それでも仙人たちは解脱に達したと思っていました。
お釈迦様がやっと本物の解脱・涅槃に達したのです。今まで解脱だと思っていた精神状態と違うことを明確に示すためにお釈迦様は「覚り」という言葉に「正」という形容詞をつけたのです。「正」とは完全、完璧という意味です。
■出典 『ブッダの質問箱』