ポール・ホーケン


〔翻訳〕
木蔵(ぼくら)シャフェ君子Wisdom2.0Japan 共同創立者 )


第2話


●私たちは何のためにいるの?

    気候変動に関する本を出版するのは非常に厳しい時代です。『DRAWDOWN』を出版する際、30年来の付き合いのある出版社、Penguin Booksの編集者から「気候に関する本は売れないから『DRAWDOWN』もあまり出したくない。それにこの本はペーパーバックだからニューヨーク・タイムズでも扱ってもらえないだろう。載るのはいつもハードカバーの本だから」と言われました。カラーで印刷されたハードカバーがどれだけ⾼価になるか知っているのでしょうか?

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    出版を巡る攻防は1年あまり続きましたが、最終的にはCEOのキャサリン・コートの鶴の⼀声で出版が決まりました。
    会議の場で彼女は言ったのです。「この本を出版しないなら、私たちは何のためにここにいるの?」と。
    その通りです。私は何のためにここにいるのでしょうか?

●自分は他人とは違うというエゴ

    今日のセッションで、私から希望に満ちたスピーチを聞こうと期待されていた方、ごめんなさい。恐怖に満ちたスピーチを期待されていた方もごめんなさい。今日のスピーチはそのどちらでもないのです。
    私たちは⼀晩に10回、⽬を覚ますと⾔われています。危険を察知するために脳をスキャンしているのです。
    数万年前の人類は屋外で寝ていました。だから睡眠中に何回も目を覚ますのは理にかなっているのですね。今でも脳はその時のままなのです。
    私たちは、いつもいろいろなことを考えています。自分は人に認められているのかどうか、服装はちゃんとしているかどうか、これから自分はいったいどうなるのか……などなどあらゆることを考えています。
    その考えはすべてエゴからきていることにお気づきですか?  あらゆる考えの根底には「⾃分は他者とは違う」という思いがあるのです。
    ですから気候変動の問題を考える時も、そのような個⼈的エゴを通さずに考えるのはとても難しいのです。

●すべては1つの存在である

    気候変動にまつわる⾔語は男性によって作られてきました。もちろんカトリーヌ・ネージョなどの⼥性科学者には敬意を持っていますよ。しかしもともとの⽤語を作ったのは男性なのです。気候の問題と「闘う」、気候の問題に「取り組む」、問題を「抑え込む」、問題を「軽減する」。すべて男性の言葉です。女性は皆、幼い頃からよそもの扱いされているのです。
    私たちが「気候変動と戦う」というとき、その「気候」というものはいったいどこにあるのでしょうか? ⽣物圏と⼤気圏は別物だという考え⽅はどこから来たのでしょうか?    気体があって、物質がある。どちらも同じ地球なのに。地球は1つの存在でしかないのです。

●一瞬一瞬変化する世界

「気候変動」と言う言葉の通り、気候は刻々と変化しているものです。そうですよね? 変化するのが当然です。
    地球の軸が変われば 季節や海の流れが変わります。大気の温度も変わります。そのおかげで川ができ氷河ができました。イチゴやグリズリーベアが採れるようになり、サケが誕生し、トンボが生まれ、ポップコーンを食べられるようになりました。
    ⽣命が現在のような姿になったのは気候の変化によって様々な変化が引き起こされたからです。
    ですから、変化と戦おうとすることは無意味です。
    私たちは戦うべきでないものと戦おうとしています。それだけでなく、私たちは気候の変化と⾃分そのものを別のものとして切り離して考えてしまっています。
    気候が公共の問題として浮上して45年以上経っているのに、⼈類の98%はそれに対して何のアクションもしていません。98%が何もしていないのですよ。そのうちの半数は、気候変動の原因を大まかに(あるいは詳細に)分かっているにもかかわらず、何もしていないのです。
    なぜそうなってしまうのでしょうか?

●つながりを作る

    私は皆さんを責めているのでも、非難しているのでもありません。
    私たちの言葉の使い⽅に問題があるのではないかと私は思っています。私たちが使っている言葉と私たちが気候問題を自分自身と切り離してしまっていることは関連しているのではないかと思うのです。
    免疫システムや⽣態系のシステム、社会システムなど、あらゆるシステムを癒すには、そのシステム⾃体にもっとつながりを持たせる必要があります。
    そのためには、気候変動問題で世界の英雄になるのとは異なる⼼理状態が必要です。
    別に活動家を⾮難しているわけではありませんよ。活動は素晴らしいことです。どんどんやっていただきたいと思います。
    しかし、私たちはもっと大きなレベルで気候変動問題に関与しなければならないのです。
    そのためにはどうすればいいのでしょうか。
    リジェネレーションとは、常に正しくあることではありません。他人の⼼を変えることでもありません。⾃分の⼼を変えるのでさえ難しいのに、他の⼈たちの⼼を変えられるわけがないでしょう?
    私は「つながりを作ること」に注力してきました。
「すべてはつながっている」と口で⾔うのは簡単ですが、それだけでは⼤して役に⽴ちません。
    やるべきことは、「条件を整え、⾃分⾃⾝の考えを変えられるような状況を作り出すこと」です。
    トンボの寿命は1カ⽉ですが、幼虫(ヤゴ)として水中で5年もの間、過ごしています。トンボは24,000もの⾓膜を持っていて、常に上下左右の全方位を⾒ることができます。そんな不思議な目で空を飛ぶと、世界はどのように見えるのでしょうね。すごいですよね。
    大切なのは、地球という惑星に住んでいる私たちが、驚くべき世界の奇跡に魅了される感覚を⽣み出すことです。「ああ、すべてはつながっているんだ」と腹落ちできれば、その⼈は⾃分の考えを変えることに成功しているのです。

(第3話につづく)
(第1話に戻る)



2022年4月7日    Wisdom2.0 San Francisco現地会場&ライブストリームにて開催
翻訳    木蔵シャフェ君子
構成    中田亜希


Wisdom2.0サンフランシスコ記事一覧


第1回 ジョン・カバット・ジン


第2回 シェリー・ティギェルスキー
第3回 ポール・ホーケン
第4回 トリスタン・ハリス








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Wisdom2.0Japanカンファレンス2022 開催へ向けて

混沌とした時代の叡智ある生き方を探求する
マインドフルネスのカンファレンス&コミュニティ
10月15日(土)-16日(日)に会場+オンラインで開催

チャディ・メン・タン氏も来日登壇予定!

今年のテーマは、”The inner world changes the outer world."
私たち一人ひとりの内側にある世界の在り方が 、私たちを取り巻く外側の世界を変えていく。
Wisdom 2.0がこれまで発信してきた世界観の根底にある哲学です。

2020年からはじまったパンデミックや今年2月からの世界を巻き込む欧州での戦争、また各地で災害をもたらしている気候変動など、目に見える形で外側の世界が急激に変化をしている時代に、私たちに求められているのは、どれだけ世界が変わろうと、その変化の波に飲み込まれず、その波を乗りこなし私たちの在り方です。それはまた、新たな波を生み出していく起点ともなるでしょう。

その鍵は、私たちの内側にある意志と叡智の発動。
Wisdom2.0Japanは、今年も、世界に真のウェルビーイングをもたらそうとする人類の意志と叡智を発信していきます。


【Wisdom2.0Japan 2022 開催概要】
●日程:2022年10月15(土) 16(日)
●参加方法:オンライン / 会場(Lstay & grow晴海    先着60名限定)
●詳細・申込:https://event.wisdom2japan.com

【Wisdom2.0Japan 2022 プログラムのご紹介】
10月15日(土)
①「SHOW UP! 〜 マインドフルネスのネクストステップ」
        Pandemic of Love創設者:シェリー・ティゲェルスキー
②「社会共通資本がもたらすこれからの世界のカタチ 〜 経済学者・宇沢弘文氏のWisdom(仮)」
        宇沢国際学館代表取締役:占部 まり(会場参加予定)
③「欧州、中東から見る2030年の世界の未来予想図 〜 一人ひとりの内なる創造性が世界を拓く」
        英国王立国際問題研究所 研究員:玉木 直季(会場参加予定)
④「SEL、マインドフルネスによる教育改革 〜 豊かな日本のための教育者たちの挑戦」
        かえつ有明中学・高校 副校長:佐野 和之(会場参加予定)
        日本SEL(Social Emotional Learning)協会代表理事:下向 依梨
⑤「『世界標準の経営理論』とWisdom 〜 コンパッション、マインドフルネスによる経営実現(仮)」
        早稲田大学大学院 経営管理研究科教授:入山 章栄
        華道家:山崎 繭加(会場参加予定)

10月16日(日)
①「最新テクノロジーとしての原始仏教」
        SIY(Search Inside Yourself)創設者:チャディ・メン・タン(会場参加予定)
②「リジェネレーション 〜 気候危機を今の世代で終わらせるための叡智」
        環境保護活動家:ポール・ホーケン
③「パンデミック、戦争との向き合い方 〜 コンパッションで世界に平和をもたらす」
        Upaya Zen Center禅僧:ジョアン・ハリファックス
④「ビジネスにおけるウェルビーイングとマインドフルネス 〜 セールスフォースにおけるウェルビーイングの取り組み」
        プラムビレッジ ダルマティーチャー:シスター・チャイ
        株式会社セールスフォース・ジャパン:佐藤むつみ
        株式会社セールスフォース・ジャパン:酒寄久美子
⑤「内なるプラクティスと世界平和 〜 マインドフルネスで平和を実現する」
        曹洞宗僧侶:藤田 一照(会場参加予定)
        SIY(Search Inside Yourself)創設者:チャディ・メン・タン(会場参加予定)
        プラムビレッジ ダルマティーチャー:シスター・チャイ

【Wisdom2.0グローバルネットワーク(韓国との共同開催)】
◯Wisdom2.0 創設者:ソレン・ゴードハマー
◯Wisdom2.0Korea創設者:ユ・ジョンウン(会場参加予定)
◯Wisdom2.0Japan共同創設者:荻野 淳也(会場参加予定)
◯Wisdom2.0Japan共同創設者:木蔵 シャフェ君子(会場参加予定)

【プレイベントのご案内】

Wisdom2.0Japanでは、7月から12月までの半年間、プレイベント、アフターイベントを毎月開催し、マインドフルネスのプラクティスを深めたり、世界のWisdomに触れ、自分の内側をより豊かに育んだり、また、Wisdomに基づく社会変革に関する活動も紹介しております。

●Wisdom2.0 2022 ”EMERGENCE”動画視聴&対話(日本語通訳付)
●書籍『コンパッション』×アクティブ・ブック・ダイアローグ®️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️️×マインドフルネス
●「リジェネレーション」をダイジェストで学びマインドフルに探求する
●【購入者限定】マインドフルな対話交流会
●マインドフルネス・リトリート
●企業パートナー様とのコラボイベント

ぜひ、このカンファレンスとコミュニティにご参加ください。

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